静岡大学工学部の吉田信行准教授を中心とする研究グループは、超低栄養性細菌を用いたバイオプラスチックの生産に成功した(掲載誌:Scientific Reports)。
超低栄養性細菌とは、炭素・窒素・硫黄などの主要栄養源をほとんど必要とせずに生育可能な微生物であり、従来の微生物培養の常識を覆す存在である。研究グループは、これらの細菌の生育メカニズムの解明と産業応用を目指しており、今回の研究では、Rhodoocccus qingshengii N9T-4株に、PHA(ポリヒドロキシアルカン酸)生産菌として知られるCupriavidus necatorの遺伝子群(phaC1, phaA, phaB1)を導入した。――導入遺伝子は、低栄養条件で活性化するプロモーター(aldA)の下流に配置され、発現が確認された。培養実験の結果、細胞内にPHAの蓄積が認められ、成分分析によりポリヒドロキシ酪酸(PHB)の生産が明らかとなった。特に、炭素源としてエタノールを添加した条件下では、乾燥菌体当たり20%以上のPHBを生産する高い生産性が示された。
本成果は、炭素源を節約しながら有用物質を生産する低炭素・低コストなバイオプロセスの構築に資するものであり、今後はPHA以外の物質やC1化合物(合成メタン・メタノールなど)を原料とした炭素循環型技術への展開が期待される。なお、本研究は、JST未来社会創造事業「低炭素社会の実現」領域の一環として、同大学と京都大学、東京科学大学との共同実施されたものである。