エア・ウォーターグループに属し、国内製塩業界で約40%のシェアを持つ最大手である日本海水(本社:東京都千代田区)は、香川県坂出市にある讃岐工場の改修計画が、経済産業省の「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」に採択され、最大40億円の補助を受けることを公表した。――これまで同工場は石炭火力を主電源としていたが、計画では木質バイオマス発電所への転換を図り、2028年度の運転開始を目指す。
日本海水は年間40万トンの塩を生産している。煎ごう工程では大量の電力と蒸気を必要とするため、讃岐工場に併設された石炭火力発電所から、年間約13万トンのCO2が排出されていた。「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号、略称:GX推進法)」に基づく「化石燃料賦課金」の導入が2028年度に予定される中、同社では脱炭素化への対応が急務となっていた。
新設される讃岐バイオマス発電所は、最大出力9,400 kWで、年間14万トンの木質バイオマス(建築廃材、樹皮、間伐材、海外材など)を燃料として使用する。これにより、坂出市全体のCO2排出量の約17%に相当するCO2削減が見込まれ、日本海水としては2030年度に67%のCO₂削減を達成する見通しである(2020年度比)。さらに、2035年度には同社・赤穂工場の脱炭素化により、国内製塩メーカーとして初のカーボンニュートラル達成が実現する可能性が高い。
同社はこれまでにも兵庫県赤穂市や福岡県苅田町で木質バイオマス発電所を稼働させており、再生可能エネルギーの活用を通じて地域の林業・木材産業の振興にも貢献してきた。発電時に発生する蒸気は塩の製造工程に再利用されており、製塩プロセス自体のエネルギー効率向上にも寄与している。