国土交通省は、鉄道分野の脱炭素化を推進するため、官民連携による「鉄道分野のGX(グリーン・トランスフォーメーション)に関する基本的考え方」をとりまとめ、公表した。
GX(広義)とは、化石燃料中心の社会構造をクリーンエネルギー中心へと転換する取り組み。鉄道は単位輸送量当たりのCO2排出量が少ないものの、総量ではバスやタクシーを上回り、航空や内航海運と同程度である。鉄道事業者は2050年カーボンニュートラルの達成に向け、2013年度比で2040年度までにCO2排出量を540万トン削減する中間目標を掲げている。
基本的考え方では、電化区間において次世代パワー半導体や高性能モーターを用いた高効率車両への更新を加速し、2035年度までに非VVVF車両および初期VVVF車両(GTO方式)をすべて置き換える、といった具体的な施策が挙げられている。VVVFとは「Variable Voltage Variable Frequency」の略で、電圧と周波数を可変制御することでモーターの効率的な運転を可能にするインバータ制御技術である。従来の抵抗制御車両と比べて使用電力量を約3分の1に抑えることができ、省エネ性能に優れる。また、回生電力の活用促進計画の策定、超電導送電システムの実用化と営業線への導入、省エネ運転の高度化などを通じて、2040年度までにエネルギー使用量を2013年度比で25%以上削減する方針が示されている。さらに、非電化区間では水素車両やバイオディーゼル燃料の導入を進め、2030年度までに営業運転を開始。2031年度以降は新規導入車両を原則としてハイブリッド車両、蓄電池車両、水素車両とし、導入条件が整えばゼロエミッション車両を優先する。これにより、2040年度までに軽油使用量を2013年度比で40%以上削減することを目指すとしている。――再生可能エネルギーの導入については、鉄道アセットを活用した発電設備容量を2035年度までに2倍以上に拡大し、2040年度には使用電力の約7割を非化石由来とする目標を設定。国と鉄道事業者はモーダルシフトの推進や支援制度の整備を通じて、鉄道の環境性能向上を運輸部門全体の排出削減につなげることを求めている。
本方針は、GX2040ビジョンに基づき、鉄道分野の成長機会としてのGX投資を官民一体で加速することを目的としている。