三重大学大学院生物資源学研究科の近藤誠准教授らの研究グループは、愛知県立農業大学校および有限会社環境テクシスと連携し、カステラ製造過程で生じる副産物を乳牛飼料の一部として活用する実証試験を実施した。背景には、食用米の価格高騰に伴う飼料用米の生産減少があり、酪農における飼料の安定供給が課題となっている。 カステラ副産物は、製造工程で発生する切れ端などで、生産量の約1割を占める。糖分やデンプンが豊富であることから、飼料としての有効利用が期待されていたが、乳牛への給与に関する科学的検証は十分に行われていなかった。従来、食品副産物の飼料化は主にタンパク質含量の高い「おから」などが対象であり、糖質系副産物の活用は限定的であった。 本研究では、泌乳中・後期のホルスタイン種乳牛11頭を対象に、飼料の7%(トウモロコシなどデンプン原料の30%相当)をカステラ副産物で置換し、42日間にわたって給与した。その結果、乳量・乳脂肪含量・乳タンパク質含量・乳脂肪酸組成に有意な差は認められず、繊維の消化率が有意に向上した。また、糞便pHや第一胃内微生物タンパク質合成量にも影響はなかった。 この成果は、食品副産物の有効利用による飼料コスト削減や食品廃棄物の削減に資するものであり、環境負荷の低減にもつながる可能性がある。研究成果は2025年7月22日、学術雑誌「Animal Science Journal」に掲載された。今後は、泌乳前期の乳牛や給与割合の拡大など、実用化に向けたさらなる検証が求められる。 本研究は、大学の科学研究と農業大学校の現場実践を融合した点が特徴であり、教育機関と民間企業の連携によって、学生や現場の担い手が実践的な課題解決に参画する機会を提供している。副産物の飼料化は、牛乳の安定供給に寄与する手段として位置づけられている。