信州大学学術研究院・理学系 東城幸治教授らの研究グループは、トノサマガエルおよびダルマガエル(トウキョウダルマガエル・ナゴヤダルマガエル)の分布と種間交雑の動態を10年間にわたりモニタリングし、その結果を英国生態学会の専門誌『Ecology and Evolution』に発表した。――両種はともに環境省レッドリストに掲載される絶滅危惧種であり、信州地域はその分布が重なる重要な交差点となっている。
研究グループは、2010年に実施した広域調査と同様の手法で、2020年に松本盆地・伊那盆地・長野盆地を対象に再調査を実施。形態形質と核DNA・ミトコンドリアDNAの解析により、純系・交雑系統の判定を行った。その結果、松本盆地では両種の純系個体の割合が減少し、交雑個体が増加。伊那盆地ではナゴヤダルマガエルの純系割合がやや増加したが、依然として交雑系統が優勢であった。
特筆すべきは、伊那盆地においてトウキョウダルマガエル型のミトコンドリアDNAを持つ個体が確認された点である。これは、トノサマガエルとの交雑を経由してDNAが運ばれた可能性を示唆しており、種間交雑の複雑な動態が浮き彫りとなった。また、松本盆地より下流の長野盆地において、トノサマガエルの純系および交雑個体が確認され、分布拡大の兆候が明らかとなった。
研究グループは、今後も10年周期でのモニタリングを継続し、千曲川流域を含む広域的な調査を通じて、分布拡大と交雑の進行を追跡する方針である。本研究は、保全生態学的意義に加え、近縁種間の二次的接触と遺伝子流動の実態を明らかにしたものである。
情報源 |
信州大学 研究成果
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機関 | 信州大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 生物多様性 | 絶滅危惧種 | 遺伝子解析 | 分布拡大 | ミトコンドリアDNA | 保全生態学 | 長期モニタリング | 種間交雑 | 湿地環境 | 河川氾濫原 |
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