千葉大学大学院理学研究院の戸丸仁准教授らの研究グループ(共同研究機関:東京大学、明治大学、海洋研究開発機構ほか)は、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」による航海(KS-25-8次)において、鳥取県沖・隠岐海嶺の海底から塊状メタンハイドレートを初めて採取した。
メタンハイドレートは、低温高圧環境下で形成される氷状の物質で、天然ガス資源として注目されるほか、地球環境の急変要因ともされる。1 L のメタンハイドレートには最大で 160 L 以上のメタンが含まれる。――日本海には、深部で生成されたメタンガスが堆積物中を上昇する「ガスチムニー」構造が広く分布しており、これに伴う地形として「マウンド」や「ポックマーク」が形成される。今回の調査では、鳥取県沖約 145 km、隠岐諸島東北沖約 60 km、水深約 700 m の海底にピストンコアラー(長さ約 6 m)を投入し、メタンハイドレートを含む堆積物を採取。炭酸塩も大量に回収された。これまで新潟県沖や秋田県沖では塊状メタンハイドレートの採取例があったが、隠岐海嶺では初の成果となる。今回の発見により、日本海におけるメタンハイドレートの分布範囲と資源量の拡大が期待される。
研究者は、メタンをエネルギー源とする化学合成生物の存在可能性にも言及しており、今後は地形・地下構造・生物試料を組み合わせた調査を継続する方針である。本研究は、国連海洋科学の 10 年プロジェクト「COESS」および東京大学研究船共同利用事業(JURCAOSS25-08)、JSPS基盤研究(C)23K03505、鳥取県の支援のもとで実施された。