早稲田大学と桐蔭横浜大学らの研究グループは、近赤外光を可視光に変換して活用するアップコンバージョン型ペロブスカイト太陽電池を開発した(掲載誌:Advanced Optical Materials)。
従来のペロブスカイト太陽電池は、可視光の高効率利用に優れる一方で、太陽光の約半分を占める近赤外光の活用には限界があった。赤外光感度を持つスズ系ペロブスカイトでは変換効率が低く、また、アップコンバージョン技術も希土類材料の光吸収効率の低さから自然光下での実用化が困難とされてきた。近年、有機色素による光増感が提案され、弱い近赤外光でも可視光への変換が可能となる構造の開発が進められていたが、太陽電池材料との適合性や安定性に課題が残されていた。
本研究では、近赤外光を強く吸収する有機色素(インドシアニングリーン)を希土類ナノ粒子に固定化し、さらにその表面をペロブスカイト(CsPbBr₃)で被覆することで、界面安定性と受光層との親和性を高めた複合粒子を構築した。この改良型ナノ粒子をペロブスカイト太陽電池(CsPbI₃)に組み込んだ結果、近赤外光の可視光変換と電気出力への寄与が確認され、光電流密度の増加とともに、1.2 Vに近い開放電圧を維持しながら変換効率16%以上を達成した。分光感度スペクトルの測定でも、近赤外領域における電流応答が確認されており、色素→希土類→ペロブスカイトという多段階のエネルギー移動による発電が実証された。
研究グループは、今後の課題として、色素やナノ粒子の長期安定性、ペロブスカイト材料の耐久性、そして鉛フリー化の必要性を挙げている。今後は、研究グループが中心となって、本成果に基づく材料開発やスケールアップ研究を進めるという。
| 情報源 |
早稲田大学 ニュース
桐蔭横浜大学 ニュース |
|---|---|
| 機関 | 早稲田大学 桐蔭横浜大学 |
| 分野 |
環境総合 |
| キーワード | 再生可能エネルギー | 色素増感 | 近赤外光 | 光電変換効率 | アップコンバージョン | ペロブスカイト太陽電池 | JSTさきがけ | 希土類ナノ粒子 | 界面安定性 | 鉛フリー材料 |
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