東北大学と科学技術振興機構(JST)は、物質・材料研究機構との共同研究を通じて、室温で作動する新規酸化物正極材料を開発し、「マグネシウム蓄電池(Rechargeable Magnesium Battery, RMB)」の試作・実証に成功した(掲載誌:Communications Materials)。<b>
RMBは、希少金属であるリチウムを使用するリチウムイオン電池(LIB)に代わる次世代蓄電池として注目されている。――Mgは資源的に豊富で、空気中でも安定性が高く、電極材料として安全性に優れる――この特性を活かし、定置型電源などへの応用が期待されている。従来、酸化物正極は高電位による高エネルギー密度が得られる一方、Mgイオンの移動が困難で室温作動が難しかった。
今回の研究では、イオン交換反応を用いてカチオン空孔を導入し、Mgイオンの通り道を確保した、「MTMO(Mg₀.₃₃□₀.₃₃Ti₀.₁₁Mo₀.₂₂O)」と表現できる非晶質酸化物材料を開発。溶液燃焼法と固相反応法を組み合わせて直径10nm以下の微細粒子を合成し、Mgイオンの移動性を高めた。この非晶質構造は、従来の岩塩型結晶構造と異なり、Mgイオン挿入による構造変化と劣化を抑制する。さらに、TiやMoなどの元素が岩塩型構造を取りにくい性質も劣化抑制に寄与している。高性能電解液(Mg[B(HFIP)₄]₂塩のトリグライム溶液)およびMg金属負極と組み合わせた試作電池では、2.5 V以上の起電力を発生し、青色LEDの点灯に成功。200回以上の充放電でも最大容量の75%を維持し、従来比8倍以上のサイクル寿命を達成した。
本研究は、RMBの実用化に向けた重要な到達点であると同時に、電圧安定性やクーロン効率などの課題も明らかにした。今後は、電解液の分解挙動の解明と制御、界面解析など分野横断的な研究が不可欠である。なお、本成果は、JSTの革新的GX技術創出事業(GteX)などの支援を受けて実施された。
情報源 |
東北大学 プレスリリース・研究成果
JST プレスリリース |
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機関 | 東北大学 科学技術振興機構(JST) |
分野 |
環境総合 |
キーワード | 資源循環 | イオン交換反応 | マグネシウム蓄電池 | 酸化物正極 | 非晶質構造 | カチオン空孔 | 溶液燃焼法 | 固相反応法 | 高電位材料 | クーロン効率 |
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