矢野経済研究所は2025年6月、国内主要アパレル企業・小売業・卸・商社59社を対象に、循環型ファッション推進に関する法人アンケート調査を実施した。
「循環型ファッション」とは、衣類のライフサイクル全体を通じて資源の有効活用と環境負荷の低減を目指す取り組みであり、グローバルなサステナビリティ潮流の中で注目されている。本調査では、不要衣類の回収・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)の現状と課題、環境負荷に関する指標の開示状況などを分析している。
同社の調査レポートによると、循環型ファッション推進の第一歩となる「不要衣類の回収」は大手企業を中心に店頭回収が進められているものの、回収を実施している企業は約36%にとどまり、約63%は未実施であった。
この結果は2023年調査とほぼ同様であり、不要衣類の回収等を行わない理由については、「コストがかかりすぎる」(40.5%)が最も多く、次いで「人手が足りない」、「自社製品の販売量が少ない」(いずれも27.0%)が挙げられた。一方、2025調査では、「回収→リユースorリサイクルのメリットがよくわからない」という回答が28.6%から10.8%へと大幅に減少した。こうした変化は、業界内で環境経営への理解が一定程度進展していることを表していると同社は考察している。
また、循環型ファッションのスキーム構築では、メーカーと回収後の選別・再資源化を担う繊維事業者との連携が不可欠であることから、出口戦略としての販売先・購入先の確保も重要な課題として浮かび上がってきたという。さらに、中小企業はコスト負担が比較的大きいため、同レポートでは「制度的支援や業界横断的な仕組みの整備」の必要性を今後の課題として挙げている。