農林水産省は、「令和6年地球温暖化影響調査レポート」を発表した。本レポートは、令和5年に改定された「農林水産省気候変動適応計画」に基づく取組のひとつであり、農業生産現場における高温障害や虫害などの実態と、それに対する各地の対応策を網羅的に記録している。
水稲では、出穂期以降の高温により白未熟粒の発生が顕著となり、西日本では5~6割、東日本では3~4割の地域で影響が確認された。虫害も東日本の2~3割の地域で発生しており、これらへの対応として、水管理の徹底や施肥管理、高温耐性品種の導入が進められている。令和6年産では高温耐性品種の作付面積が前年より2.5万ha増加し、全国で20.6万haに達した。主食用米に占める割合も16.4%に上昇している。
果樹では、りんごの着果不良が北日本の6~7割の地域で発生し、ぶどうやうんしゅうみかんでは着色不良や日焼け果が西日本の4~5割の地域で確認された。これらに対しては、着色性に優れた品種の導入や遮光資材の活用、カルシウム剤の散布などが行われている。
野菜では、トマトの着花・着果不良が東西日本の4~5割の地域で発生し、いちごでは花芽分化の遅れが西日本で5~6割、東日本で4~5割の地域に及んだ。対策として遮光資材や遮熱剤の利用、新品種の導入、クラウン冷却などが進められている。
畜産分野では、乳用牛の乳量・乳成分の低下が東日本で3~4割、西日本で2~3割の地域で確認され、牛舎の送風・換気などの対策が講じられている。採卵鶏でも高温による産卵率・卵重の低下が見られた。
温暖化に伴う新たな品目への取り組みとして、北海道や秋田でのかんしょ、青森でのもも、長野・鳥取・広島でのレモンなどの栽培が進められている。これらの動向は、地域の気候変動適応力を高める施策として注目される。――本レポートは、令和6年の都道府県報告を取りまとめたものであり、農業現場の実態を反映した資料として、今後の適応計画推進に資する基礎資料となる。