京都大学大学院工学研究科の藤森真一郎教授は、IIASA(国際応用システム分析研究所)、東京大学未来ビジョン研究センター、立命館大学などの研究者とともに、統合評価モデル(IAM)を用いた気候変動シナリオ研究において、国際的に開かれた比較研究プラットフォームの構築を提案した(掲載誌:Nature Climate Change)。
本提案は、IPCC第6次評価報告書で指摘された「モデル比較研究の地域偏在性」への対応として、研究テーマの提案から結果の公開までを明確な手順で進める新たな枠組みを提示するものである。統合評価モデルは、将来のエネルギー・土地利用・経済・気候などを推計する政策支援ツールであり、IPCC報告書や各国の気候政策の基盤となってきた。しかし、従来のモデル比較研究は欧米の一部機関に偏っており、途上国や新興国の視点が十分に反映されていないという課題があった。
今回の提案では、①研究テーマの提案、②モデル実験プロトコルの公開、③自由参加によるシナリオ作成とデータ共有、④品質チェック後の成果公開という4段階の流れを国際的に共有することで、透明性と包摂性を確保する。この枠組みにより、途上国の研究者や若手研究者も参加可能となり、将来シナリオの多様性が拡充される可能性がある。また、企業や教育機関、市民社会も成果を活用できるようになることで、気候政策の科学的根拠がより公正かつ実効性の高いものとなる。研究者らは、科学の進め方そのものを変革する必要性を強調しており、国際的な交流と議論を通じて研究コミュニティ全体の方向性を再構築する意義を強調している。なお、本研究は、JSTのASPIRE事業、環境研究総合推進費、住友電工グループ社会貢献基金、ベゾス・アース・ファンドによる支援を受けて実施された。