九州大学を中心とする研究グループは、日本産ダニヒメテントウ族の分類学的総説を発表した。本総説では、ハダニ類の天敵として知られるダニヒメテントウ族の種多様性を体系的に解明し、農業害虫防除への応用可能性を示している(掲載誌:Acta Entomologica Musei Nationalis Pragae)。
ダニヒメテントウ族 (Stethorini) はハダニ類を捕食する重要な天敵であるが、成虫が体長約1~1.5mmと微小で黒一色のため、外見による識別が困難であった。そのため、識別・分類に当たっては雄交尾器など微細な形態観察が不可欠であり、日本における種構成や分布は長年不明のままであった。一方、農業分野では、薬剤抵抗性を獲得しやすいハダニ類に対する生物的防除の重要性が高まっており、天敵となり得る昆虫の分類学的整理は喫緊の課題であった。
今回、研究グループは、国内外の研究機関に所蔵される約1,700個体の標本を精査し、日本には2属8種のダニヒメテントウ類が生息することを確認した。そのうち2種は日本初記録種、2種は新種であり、特に新種マツダニヒメテントウ(Parastethorus pinicola)はマツ類に発生するハダニを捕食する可能性が高い。また、福岡市東区に立地する九州大学箱崎サテライト構内のクロマツ林からも採集され、都市緑地が生物多様性保全に果たす役割を示す事例となった。
本研究は、日本の昆虫相や生態系理解を深めるとともに、農業害虫防除への応用に資する基盤情報を提供するものである。今後はDNA解析による種判別精度の向上や、捕食行動の評価を通じた生物防除資材としての実用化が期待される。
| 情報源 |
九州大学 ニュース(研究成果)
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| 機関 | 九州大学 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 生態系保全 | DNA解析 | 生物的防除 | ハダニ類 | ダニヒメテントウ | マツダニヒメテントウ | 農業害虫管理 | 都市緑地保全 | 昆虫分類学 | Acta Entomologica |
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