産業技術総合研究所(産総研)とブリヂストンは、使用済タイヤを資源化するケミカルリサイクル技術を開発した。本成果は、タイヤに使用される加硫ポリイソプレンゴムを室温付近で化学分解し、さらに熱分解を組み合わせることで、イソプレンモノマーとカーボンブラック(CB)として回収するものである(掲載誌:ACS Catalysis)。
タイヤ産業の世界市場規模は28兆円超と試算されており、日本のタイヤメーカーはブリヂストンを筆頭に世界シェアで上位を占めている。現在、使用済タイヤの多くはサーマルリカバリーによって燃料化されているが、炭素含有率が高いため焼却時に多量のCO2を排出する。こうした背景から、資源循環やカーボンニュートラル社会の実現には、原料レベルまで分解するケミカルリサイクル技術の確立が不可欠である。
今回の技術では、炭素-炭素二重結合を組み替えるメタセシス反応を利用し、硫黄成分の影響を受けない高活性触媒を用いることで、室温付近で加硫ポリイソプレンゴムを液状ポリマーに分解することに成功した。
得られた液状ポリマーは溶媒に溶解するため、固体成分であるカーボンブラック(CB)と容易に分離できる。また、この液状ポリマーを熱分解すると、イソプレンモノマーやBTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)などの化成品原料を回収できる。研究ではさらに、反応生成物の詳細解析により、分子内メタセシス反応で環状イソプレン4量体が生成することを確認している。この化合物の立体構造も、単結晶X線解析によって確認されている。
産総研とブリヂストンは、今後ブタジエンゴムなどへの展開やスケールアップを進め、2030年代の事業化を目指すという。本成果はNEDOのグリーンイノベーション基金事業の一環として実施された。