愛媛大学、理化学研究所、日本原子力研究開発機構、九州大学の共同研究チームは、国内の鉱山跡地から銅を鉱石レベルまで濃縮固定できる新規鉄酸化細菌を世界で初めて純粋分離し、その強力な鉄酸化作用が銅の高濃縮を引き起こす仕組みを解明した(掲載誌:Environmental Microbiology)。
研究チームは、国内の鉱山跡地で鉄酸化物沈殿に銅が最大2重量%(100 g中に約2 g)まで濃縮される現象を発見した。この濃度は世界の銅鉱石平均値(約0.7重量%)を超えており、通常の化学的吸着では説明できないレベルであった。この発見を契機に、研究チームは次の3段階で研究を進めた。まず、鉱山跡地の鉄沈殿物に付着する微生物群集を遺伝子解析し、Gallionellaceae科の鉄酸化細菌が銅濃縮に関与する可能性を特定した。次に、現場の水質条件を再現したカスタマイズ培地法を開発し、難培養性であった鉄酸化細菌の培養条件を確立した。さらに、現場で優占していた系統とほぼ同じ系統に属する鉄酸化細菌を純粋分離し、その分離株が Sideroxyarcus 属に属する新規株(TK5株)であることを明らかにした。
そして最終的に、Sideroxyarcus属に属する新規分離株(TK5株)を純粋分離することに成功した。TK5株は、鉄酸化反応により生成する鉄(III)酸化物に銅を強固に吸着・共沈させ、鉱石レベルの濃縮を実現することが放射光X線分析で確認された。さらに、現場濃度の20倍を超える銅耐性を示し、その耐性を支える遺伝的仕組みを備えていた。加えて、CO₂を唯一の炭素源とする独立栄養性を持ち、外部有機物に依存しないカーボンニュートラル型の銅回収プロセスを構築できる可能性が示された。これにより、従来の化学薬品や大量エネルギーを要する金属回収技術に代わる、省エネルギー・低環境負荷な微生物利用技術の実現が期待される。
研究チームは、本成果は「環境微生物学と資源工学の両面で革新的な意義を持つ」と訴求している。
| 情報源 |
愛媛大学 プレスリリース
理化学研究所 研究成果(プレスリリース) JAEA 研究開発成果 九州大学 研究成果 |
|---|---|
| 機関 | 愛媛大学 理化学研究所 日本原子力研究開発機構(JAEA) 九州大学 |
| 分野 |
水・土壌環境 環境総合 |
| キーワード | 環境浄化 | カーボンニュートラル | 遺伝子解析 | 鉱山跡地 | 鉄酸化細菌 | 銅濃縮 | バイオマイニング | Gallionellaceae | Sideroxyarcus | 重金属固定化 |
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