東京農工大学・農学部附属野生動物管理教育研究センターの髙田隼人特任准教授らは、テングコウモリの食性を糞の顕微鏡分析により解明した(掲載誌:Mammalia)。
テングコウモリは左右に突出した鼻孔をもつ希少な食虫性コウモリで、各地で絶滅危惧種に指定されている。個体数が少なく、単独生活ではねぐらを頻繁に移動するため、同種の食性に係わる調査が困難で、保全に係わる基礎的な情報が不足していた。
本研究の鍵技術は糞内容物の顕微鏡識別である(糞分析:糞の内容物を顕微鏡で識別し食性を推定する方法)。評価指標は獲物分類(甲虫類・バッタ類・蛾類幼虫・クモ類など)とサイズで、非飛翔性の節足動物の摂食比重を把握した。山梨県・富士北麓の冷温帯針葉樹林に生息する個体群に対して、糞試料の採取・識別した結果、比較的大型の昼行性甲虫(例:シロテンハナムグリ)、バッタ、蛾の幼虫、クモなど夜間に飛翔しない節足動物を主に捕食していることが分かった。こうした食性の傾向は、本種が空中ではなく地上や植生上でホバリングもしくは着地しながら採食する習性を示唆している。また、2〜2.5 cm級の甲虫も摂食可能であることが初めて示された。すなわち、広葉樹林の先行研究よりも甲虫への偏りが強く、環境応答的に食べ物を変化させることが確認された。さらに、本研究のフィールドは昆虫の多様性・個体数が広葉樹林より少ないとされるため、栄養資源構成に応じた摂食の偏りが生じたと考えられた。
髙田隼人特任准教授は、「非飛翔性節足動物の多様性・個体数の保全が本種保全に不可欠だ」と述べている。今後は生息環境別の餌資源と採食行動の比較を進めるという。