石川県立大学緑地環境学研究室の上野裕介准教授らは、雪国で道路端に設置される固定式視線誘導柱(通称「矢羽根ポール」)の空洞がスズメ類の営巣場所として機能している実態を体系的に報告した(掲載誌:Environmental Management)。
矢羽根ポールは吹雪時の運転者視認性向上を目的に国交省の「視線誘導標設置基準」(昭和59年通知)に基づき設置されている視線誘導標。長年にわたり道路標識の一種として用いられており、金属支柱に反射板と矢羽根形状の案内部が付設され、支柱の空洞は標準径70〜100 mmとなっている。これまで、人工構造物が鳥類などの営巣基盤になる事例が散発的に報告されてきたが、雪国に限定された構造体での大規模評価はなかった。
研究グループは、北海道全域を対象に、矢羽根ポールがスズメ類の営巣に果たす役割を調査した。調査では、ポール総数の推計、営巣占有率、種別営巣比率、道路区間ごとの個体群動態の相関解析を主要な評価軸とした。手法は、地理情報による広域ポール数推定、現地調査(2023年6月)、ストリートビューによる設計基準適合確認、モンテカルロ法による不確実性推定、長期モニタリングデータとの比較、統計解析(マン・ホイットニーU検定・線形回帰)を組み合わせた。
その結果、北海道内の矢羽根ポールは約281,560本と推定され、そのうちニュウナイスズメの営巣利用率は約7.7%、スズメ類全体では約5.0%と見積もられた。これは国外導入種であるニュウナイスズメだけでなく、在来スズメとの生態相互作用を示唆する数値である。さらに、ポール密度が高い道路区間ではニュウナイスズメの個体数が高い傾向が確認され、人工構造物が設計意図外に生物多様性支援機能を持つ可能性が示された。
研究グループは、矢羽根ポールを「気候・文化に由来するグリーンインフラ的存在」と位置づけ、営巣が確認された人工構造物で実際にヒナが孵化し、巣立ちまで至る割合(再生産成功率)の評価や営巣安全性に関する指針策定を進める方針である。
| 情報源 |
石川県立大学 研究トピックス
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| 機関 | 石川県立大学 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 人工構造物 | 営巣 | スズメ | 固定式視線誘導柱 | 矢羽根ポール | ニュウナイスズメ | 視線誘導標設置基準 | 冬季道路安全 | モンテカルロ法 | 再生産成功率 |
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