長崎大学大学院総合生産科学研究科と海洋未来イノベーション機構は、海底ごみがアマモ場に与える影響と除去効果を実証した(掲載誌:Marine Pollution Bulletin)。
アマモ場は「海のゆりかご」と呼ばれ、水産資源供給や炭素固定(ブルーカーボン)に不可欠だが、世界的に減少傾向にあり、海洋ごみの蓄積が要因の一つとされてきた。しかし、自然環境下でその影響を長期的に評価した研究はほとんどなかった。研究グループは、長崎県新上五島町の有川湾内の2地点で、「ごみ除去による回復実験」と「ごみ放置による悪影響の検証」を実施した。スキンダイビングによる毎月の回収、重量・材質の分類、アマモの面積・被度・個体数密度の追跡を行った結果、4年間で426 kgの海底ごみを回収された。回収ごみの65%は漁網で、74%はプラスチック由来であった。一方、除去を継続した区画では、途中で除去を止めた区画よりもアマモ場の拡大率が高く、地下茎の伸長が促進された。また、漁網を放置した区画では、252日間で個体数密度が急減し、減少速度に換算すると対照区の約27倍となっていることが分かった。これは、網が光合成を阻害し、水流を妨げて酸欠状態を引き起こすためと考えられた。
本成果は、海底ごみの悪影響が数ヶ月で顕在化する一方、除去による回復には数年を要することを示している。研究グループは、海底ごみ除去を「美化活動ではなく、生態系修復戦略」と位置づけ、今後は根圏微生物や低生成物への影響も解析する方針だ。