動物の体表に付着した種子が運ばれる「付着種子散布」は広く知られる現象であるが、どの哺乳類がどの植物種の種子を運んでいるのか、野外で群集全体の関係性を明らかにすることは難しかった。今回、東京農工大学、富山県立山カルデラ砂防博物館、ミュージアムパーク茨城県自然博物館、フランス国立農業・食料環境研究所(INRAE)からなる国際共同研究チームは、交通事故で死亡した哺乳類200個体(14種)の体表から種子を直接採取する手法を用いて種間関係を調査した(掲載誌:Oikos)。
本研究では、2006〜2023年に富山県内で回収された哺乳類の遺体を対象とし、体表に実際に付着していた植物種子の記録を収集した。対象200個体のうち21%にあたる42個体から計269個(16種)の植物種子が確認され、種子が付着していた哺乳類の88%がタヌキなどの中型哺乳類であることが判明した。付着種子は秋に多く見られ、最も多かった植物種はイノコヅチであった。タヌキでは12種の植物種子が確認されるなど、複数の哺乳類種にまたがる付着状況が記録された。
交通事故遺体の利用によって、家畜や剥製に依存していた従来手法では得られなかった野生個体由来のデータが得られることを実証した事例であり、哺乳類と植物の付着種子散布における種間関係を群集規模で捉える可能性が示された。