東京都市大学の内田圭准教授と横浜国立大学(現・東京都環境科学研究所)の岩知道優樹研究員らの研究グループは、「東京都多摩地区に残存する里山(原著論文では remnant habitats と表現)」を対象に、下草刈りおよび萌芽更新といった伝統的管理の再導入が植物多様性に及ぼす影響を検証した(掲載誌:Agriculture Ecosystems and Environment)。
本研究が対象とした伝統的管理には二つの手法が含まれる。「下草刈り」は、林床に繁茂する草本層を定期的に除去する管理であり、光や養分をめぐる競争を緩和する役割をもつ。一方、「萌芽更新(コピシング)」は、広葉樹を伐採した後に切り株から再生する萌芽を育成し、森林の若返りを図る管理手法である。萌芽更新は数十年単位の周期で実施されることが多く、短期的な管理行為とは性格を異にする。本研究では、これらの管理が組み合わさることで、都市域の里山における生息環境がどのように変化するのかを検証した。
具体的には、下草刈りや萌芽更新が継続的に行われている管理地と、管理が放棄された里山を比較し、草本層から木本層までの植物種数や個体数を記録した。あわせて、土壌水分量や林床の光環境を測定するとともに、地理情報システム(GIS)を用いて周辺1km圏内の土地利用構成を把握した。これらの要因を構造方程式モデル(SEM)で統合的に解析することで、各管理手法が植物多様性に及ぼす直接的・間接的な影響を整理した。
解析の結果、伝統的管理が行われている場所では、管理放棄地に比べて植物種数が多く、特に在来植物や開花植物の種数・個体数が高いことが示された。なかでも下草刈りは、競争的な優占種の抑制や土壌水分の増加を通じて、植物多様性に強く寄与していることが確認された。一方、萌芽更新は主として土壌水分を介した間接効果を通じて植物多様性を支える役割を果たしていた。周辺の都市化の程度や土地利用構成といった景観要因の影響は限定的であり、都市圏では生息地そのものの管理状態が植物多様性を左右することが示唆された。
本研究は、農村・中山間地で長年実施されてきた里山の伝統的管理が、都市圏に残る里山においても植物多様性の維持に寄与し得ることを示したものとなる。
| 情報源 |
東京都市大学 プレスリリース
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|---|---|
| 機関 | 東京都市大学 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 里山管理|下草刈り|萌芽更新|植物多様性|都市圏里山|伝統的森林管理|生息地の質|都市緑地|構造方程式モデル|生態系サービス |
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