大学研究室紹介

「大気中の微量気体やエアロゾル粒子の動態や性質を調べることで気候や大気環境、健康への影響を明らかにする」(中山智喜准教授)

長崎大学環境科学部・大気環境科学研究室

研究内容

  • テーマ:
  • 大気中の微量気体やエアロゾル粒子の動態や性質を調べることで気候や大気環境、健康への影響を明らかにする
  • 概要:
  •  PM2.5などの微小粒子状物質(大気中に浮遊する液体や固体の小さな粒子)は、人間の健康に悪影響を及ぼすのに加え、太陽光を吸収・散乱したり、雲粒の生成に関与したりすることで、気候や気象、大気環境に大きな影響を及ぼしています。

     大気エアロゾルには、海面や土壌から放出される海塩粒子や土壌粒子、燃焼中に生成するススや有機物粒子、胞子や花粉など、粒子として直接放出されるものに加え、化石燃料燃焼や火山から放出された二酸化硫黄や、植物や人間活動から放出された気体の有機化合物が大気中での化学反応を経て、粒子化し生成するものがあるなど、その発生源や生成過程は多岐にわたります。また、大気中で化学反応を経て変質し、光学特性(光吸収・光散乱の大きさなど)や吸湿特性(水蒸気を吸収して雲粒になりやすいかどうかなど)が変化するなど、輸送中に気候や気象、大気環境に及ぼす影響が複雑に変化します。

     そこで本研究室では、大気観測や室内実験を通じて、エアロゾル粒子の発生源や変質過程により、粒子の化学成分や光学特性がどのように変化するか調べています。

     また、パナソニック(株)と共同開発した小型のPM2.5計測器を用いて、長崎大学の練習船による海上での観測や、対馬や福江島、雲仙岳周辺などでの多地点観測を行うことで、アジア大陸や国内の発生源からのPM2.5の輸送過程について調べています。さらに、大気汚染が深刻なアジアやアフリカの途上国でのPM2.5の観測研究も進めています。

     これらの研究を通じて、人間活動や自然活動が、気候変動や大気環境/大気汚染、健康などに及ぼす影響について、理解を深めることを目指しています。
     
  • キーワード:
  • 大気微量気体, PM2.5, エアロゾル粒子, 気候変動, 大気汚染
  • 学部体系:
  • 理工学系(理学系)
  • 研究分野:
  • 地球環境(監視・予測関連)、健康・化学物質(分析・モニタリング・評価関連)、大気環境(その他大気関連)

    長崎における気体成分やエアロゾル粒子の観測の概念図

    長崎県民の森(森林観測サイト)で粒子捕集用フィルターを交換中

    研究室概要

  • 大学・研究室名:
  • 長崎大学環境科学部・大気環境科学研究室
  • 研究室の特色・PR:
  • 長崎は、アジア大陸に近く、大陸から越境輸送された気体成分やエアロゾル粒子を観測するのに適しています。また、島・海・山・温泉など自然豊かなフィールドで研究を行うことができます。また、研究室の学生さんと一緒に高校などを訪問し、「PM2.5ってなんだろう?」などのテーマで実験を交えた授業を行うなど、環境教育にも取り組んでいます。
  • 先生のプロフィール:
  • 氏名:
    中山智喜
    出身大学:
    神戸大学
    出身大学院:
    名古屋大学大学院
    卒業研究のテーマと概要:
    大学院:レーザー分光法を用いた中層大気(成層圏・中間圏・熱圏)での窒素酸化物(NOx)や水素酸化物(HOx)の新しい生成過程の室内実験研究
    職歴など:
    2006.3 名古屋大学大学院理学研究科博士後期課程修了 
    2006.4 京都大学大学院工学研究科 助手(2007.4から助教)
    2007.6 名古屋大学太陽地球環境研究所 助教
    2015.9 名古屋大学太陽地球環境研究所 講師
    2015.10 名古屋大学宇宙地球環境研究所 講師(組織改編)
    2018.3 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 准教授
  • 所属学生の人数:
  • 5~10人程度
  • ゼミの恒例行事(旅行・実習・調査など):
  • 1泊2日程度
    年 2回
    2泊~1週間未満
    年 2回
    1週間~1か月以内
    年 0回
    1か月以上
    年 0回
    主な行先: その他に日帰りゼミの恒例行事(旅行・実習・調査など)が5~10回程度あります
  • 研究室連絡先:
  • 雲仙ロープウェイの妙見岳駅でのPM2.5などの観測

    研究室メンバーからのメッセージ

     学部と修士で、小型のPM2.5計測器を持って歩きながら測定した場合に、どの程度、正確な測定ができるのか調べる室内実験や、実際に屋外で歩きながらPM2.5の分布状況を調べる研究に取り組んできました。この研究室は、頑張る人にチャンスを与えてくれる環境が整っていると感じています。「フィールドに出て大気観測を行いたい」「研究の成果を学会や論文で発表したい」という方にはピッタリだと思います。

    先生からのメッセージ

     長崎大学環境科学部は、環境分野の教員が40人以上も所属する文理融合の学部で、「環境」について広く・深く学ぶことができます。長崎は、和洋中の文化が融合された歴史文化都市であるとともに、国際交流都市でもあります。環境科学部では、海外の大学との交流事業も数多く行っており、地域に根差した活動をしながら、国際的な視野を身につけることができます。

     豊かな自然にも囲まれており、学部からでも大学院からでも、「環境」の勉強や研究をするにはとてもよいところです。皆さんと一緒に研究ができるのを楽しみにしています。

    (2021年1月現在)