フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は、2011年から実施していた農業従事者の農薬への曝露に関する研究の結果をまとめ、対策への提言を発表した。研究では農業関係者の農薬曝露に関しデータの不足が再認識されたほか、情報の集約や利用しやすさ、代替手段の導入等がいずれも不十分であることがわかった。このためANSESは、曝露低減のためには、まず農薬の使用を減らすことが最も重要だとしたうえで、1)曝露・リスク評価方法の欧州レベルでの調和・改良、2)保護器具の効果に関する知見の蓄積、3)農薬の危険性や安全な使用法に関する助言と訓練、4)曝露に関するデータ蓄積(現場の記録、混合農薬曝露の知見、情報の利用と共有)を提言した。フランスでは専業の農業従事者は2010年時点で100万人を超え、臨時や研修中の作業者、家族、農薬散布区域の近隣住民もあわせ膨大な人口が農薬にさらされている。環境への影響もあるが、農薬への曝露と健康被害、特にガンや神経疾患、生殖・発達障害との関連は、既に多くの疫学調査で明らかにされている。