アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、近年の熱帯低気圧の発達速度増進と強大化の傾向を証明し、特に影響を受ける沿岸・島嶼部の社会基盤対策の必要性を提言する米国環境情報センター(NCEI)の研究者らの論文2編を紹介した。1980~2019年に、アメリカでは、被害額10億ドル超の気象・気候災害が258件起こり、うち熱帯低気圧は44個で災害被害総額の53.9%をしめる。論文のうち一編は、1982~2009年の熱帯低気圧の24時間の風速の変化からこの間の大西洋海盆における熱帯低気圧の発達速度の増進と強大化傾向を明らかにし、人為的気候変動を主因とした。2編ともに甚大な被害を受ける脆弱地域に対する対策が急務であると述べるが、他の一編は、インフラから心身の健康に及ぶ脆弱地域の被害実態は、人々が自らに責任のない人為的気候変動の影響を過大に負わされる「環境不正義」を示すとして、安全な住居、送電網の強化、災害耐性のある病院施設、警報システムの整備等公衆衛生的観点を入れた分野横断的な取組みを提言した。