(独)日本原子力研究開発機構は、下水汚泥焼却灰中における放射性セシウムを90%以上回収することに成功したと発表した。福島第一原発事故の影響で、下水汚泥を処理した焼却灰中には放射性セシウムを含むものがあり、適切な方法で処理することが必要である。今回、研究グループでは、様々な酸溶液により溶出された放射性セシウムの濃度と、鉄などの元素濃度の分析をした結果、放射性セシウムは主に鉄酸化物に保持されて溶け出すことと、一部の鉄酸化物はケイ酸塩鉱物により覆われているため溶解しないことを解明した。そこで、灰を数百ナノメートルの細かさに粉砕し、塩酸溶液で溶解することで、粉砕前は70%しか回収できなかった放射性セシウムを90%以上回収することに成功した。また、溶解残渣物を純水や海水に浸しても、放射性セシウムは溶出しないことも確認した。これらの結果は、福島第一原発事故によって大気中に放出された放射性セシウムなどを含む、指定廃棄物の適切な処理と、その容積を減少させることに大きく貢献するものと期待されるという。