理化学研究所は、放射性廃棄物の主要な成分であるセシウム-137(137Cs)とストロンチウム-90(90Sr)破砕反応のデータ取得に成功したと発表した。原子力発電所などで生じる放射性廃棄物の処理問題を解決するためには、長寿命の放射性核種を、安定核種もしくは短寿命核種に効率良く核変換し、放射能を弱める方法を開発することが必要である。今回研究チームでは、熱中性子捕獲反応では核変換しにくい137Cs(半減期30.1年)と90Sr(半減期28.8年)に着目。重イオン加速器施設(RIBF)を用いて137Csと90Srをビームにし、陽子と重陽子を標的にして照射する「逆反応法」を利用して、破砕反応のデータを取得した。その結果、破砕反応の確率は熱中性子捕獲反応に比べて、137Csで約4倍、90Srで約100倍大きかった。さらに、反応後の原子核の半減期の分布から、137Csは89%、90Srは96%の確率で安定核もしくは半減期1年以下の短寿命核に核変換されたという。