国立環境研究所は、研究情報誌「環境儀」第65号「化学物質の正確なヒト健康への影響評価を目指して─新しい発達神経毒性試験法の開発」を刊行した。公害問題がクローズアップされた1960年代は、特定の化学物質に高濃度で曝露(ばくろ)された地域住民の健康被害が問題であった。一方、現代は、多様な化学物質に、低濃度ではあるものの、多くの人々が曝(さら)される可能性がある。胎生期に、ある種の化学物質に曝されることが、その後の成長や発達に影響を与えると考えられており、そのメカニズムを解明するためにはヒト組織由来の胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞を用いること手法が有望視されている。今号では、国立環境研究所で2009年より実施しているヒトES細胞による研究を中心に、ヒト組織由来の細胞を用いた化学物質の影響評価について紹介している。