北海道大学、東京大学、三重大学および米韓の研究機関・大学(NASA、UNIST)からなる国際研究チームは、森林火災や熱波を同時誘発させうる気候(大気循環)パターンを特定した。中高緯度上空を流れる偏西風は、ときおり停滞性の高気圧・低気圧を伴う波動(ロスビー波)によって蛇行し、複数の離れた地域に同時に異常気象をもたらすと考えられている。同研究チームは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の衛星観測データや、それを取り入れた全球大気データを用いて、北極域における2003~2017年のPM2.5濃度変動を解析した。その結果、北極域ではPM2.5濃度が7・8月に特に高くなる傾向があることが分かり、それが有機炭素エアロゾル濃度と高い相関関係にあることから森林火災の影響であることが明らかになった。こうして夏季北極域でPM2.5が高いときに特徴的な大気循環場として、ヨーロッパ、シベリア、亜寒帯北米(アラスカ・カナダ)にて同時に高気圧性循環が発達し、異常高温と森林火災が起きやすい状況にあることが分かった。独立した夏季の平均気候指標と回帰分析を行ったところ、上記15年では偶然にも同じ大気循環場のパターンが同定されたものの、2002年以前にはこのパターンが見られないことも分かった。研究チームは、この大気循環パターンにおいて,高気圧・低気圧を伴う波動が環状に北極周辺をぐるっと巡っている姿が特徴的であることから、これを”circum-Arctic wave(CAW)pattern”と命名し、今後発生・発達メカニズムの詳細解明等を進めていくという。将来的に、CAWパターンの予測が可能になれば、夏季西欧熱波とシベリア・亜寒帯北米域の森林火災(それに由来する大気汚染も含む)の同時誘発が高精度で予測できるようになることが期待される。