早稲田大学教育・総合科学学術院の富永基樹教授と博士課程の劉海洋氏は、植物の乾燥耐性に関与する新たなメカニズムを解明した。本研究はモデル植物シロイヌナズナを用いて、細胞内のモータータンパク質であるミオシンXIが、干ばつストレス時の気孔閉鎖に関与することを初めて実証したものとなる。
ミオシンXIは、細胞骨格上を移動するタンパク質で、原形質流動や細胞内輸送に関与することが知られている。本研究では、ミオシンXI遺伝子を欠損させた多重変異体を用いたところ、乾燥条件下での水分喪失速度が野生型の約4倍に達し、干ばつ耐性が著しく低下することが判明した。さらに、干ばつ時に植物ホルモンアブシジン酸(ABA)を処理した際、気孔閉鎖に必要な活性酸素(ROS)の生成や微小管の脱重合が阻害されることが観察された。
これらの結果から、ミオシンXIがABAシグナル伝達を介して気孔の動態を制御していることが示唆され、「モータータンパク質-植物ホルモン伝達」という新たな概念が提唱された。この知見は、干ばつや塩害などの非生物的ストレスに対する植物の適応戦略の理解を深めるとともに、乾燥地帯での作物の水利用効率向上やストレス耐性品種の開発に貢献する可能性がある(掲載誌:Plant Cell Reports)。
情報源 |
早稲田大学 ニュース
|
---|---|
機関 | 早稲田大学 |
分野 |
地球環境 自然環境 |
キーワード | アブシジン酸 | 活性酸素種 | 水利用効率 | ミオシンXI | 気孔閉鎖 | 干ばつストレス | 微小管脱重合 | シグナル伝達 | モータータンパク質 | ストレス耐性品種 |
関連ニュース |
|