国内ニュース


 同志社大など、渡り鳥のコンパス脳細胞を特定

発表日:2022.02.07


  同志社大学と名古屋大学の学際研究グループ(神経科学/生態学)は、渡り鳥の脳内にある頭方位細胞(以下「HD細胞」)が北を好むことを実証した。HD細胞は、動物が頭を特定の方位を向いたときに発火する細胞で、哺乳類、鳥類、魚類、昆虫類を含む様々な動物種で見つかっているが、地磁気に応答する傾向(磁気配向)を示す多くの野生動物の脳内では見つかっていない。また、鳥類の前庭神経核という部位には地磁気を感じ取る細胞があり、HD細胞に信号を送り、方向感覚のみならず「移動」に関与していると考えられている。しかし、驚異的なナビゲーションプロセスを実現している渡り鳥が「地磁気」情報に依存しているか否か、どのような脳内メカニズムを活用しているのかといったことについて実験的なアプローチは十分行われていなかった。同研究グループは、オオミズナギドリの幼鳥(雛)にニューロ・ロガーと呼ばれる脳活動計測装置を取り付け、自由歩行する雛の様子を撮影しながら、自発的な脳活動を記録する手法を考案した。当該手法を実行した結果、頭部の位置や方位の推定が可能となり、終脳の内側外套という部位に、HD細胞に相当する細胞を見い出した。また、当該細胞は北を向くと活動頻度が高まり、優先方向は不変であることも分かった。オオミズナギドリの成鳥(親)は海岸線に沿って、主に海上を渡るが、初めて「渡り」を行う雛は山脈などを超え、直線的に南下する。こうした知見を考慮すると、天体(太陽や星)、匂い、ランドマーク(地理空間的な目印)などの環境情報が不足している雛は、HD細胞が受容した信号を誤った方向と知覚していると説明できる。あたかも「コンパス(方位磁針)」のように働く脳細胞の存在が示唆されたという。

情報源 同志社大学 プレスリリース
名古屋大学 プレスリリース(研究成果発信サイト)
機関 同志社大学  名古屋大学
分野 自然環境
キーワード ナビゲーション | 生態学 | 地磁気 | オオミズナギドリ | 神経科学 | 頭方位細胞 | 方向感覚 | ニューロ・ロガー | 内側外套 | コンパス
関連ニュース

関連する環境技術