国内ニュース


 京大など、穀物輸入を介した外来植物の侵入・定着特性を解明

発表日:2022.03.04


  京都大学と(国研) 農業・食品産業技術総合研究機構の共同研究グループは、穀物輸入港は非穀物輸入港に比べて外来植物の侵入個体数が多く、そのことが周辺地域における定着成功に強く影響していることを明らかにした。国際貿易港は物流のライフラインであるとともに、外来生物の侵入経路のひとつでもある。有害な病害虫の侵入・まん延防止に向けて、植物防疫などのさまざまな予防措置が行われているものの、「意図せず侵入」する外来生物も少なくない。輸入穀物に混入している「雑草種子」もその一つであり、定着後は自然環境や農業・畜産の生産環境に実害をもたらすことがある。同研究グループは、外来雑草の侵入・定着予防等に資する知見を得るために、全国の国際貿易港20港(内訳:穀物輸入港10港・非穀物輸入港10港)で春と秋に植生調査を行い、コムギ6銘柄(生産国:アメリカ、カナダ、オーストラリア、調査対象:20 kg袋×各3ロット)に混入する雑草種子を調査し、既往調査を踏まえて種ごとの「混入率」を算定した。植生調査の結果、合計64科612種が確認され、外来種の種数は春・秋ともに穀物輸入港(群)のほうが多いことが分かった。また、原産国ごとに混入している種をある程度推測できることが確認された。さらに非計量多次元尺度法(NMDS: Non-metric multidimensional scaling)を用いて、各港の植物種組成の類似度を分析したところ、港湾の立地(緯度)と植物組成の関係性が浮かび上がり、港湾の立地(緯度)だけでなく港湾タイプ(穀物輸入港・非穀物輸入港)も植物種組成に影響を与えることが明らかになった。穀物輸入港と非穀物輸入港の間で植物種組成が異なることが示され、穀物に多く混入していた種ほど穀物輸入港に偏って生育している傾向も認められたという。外来植物の初期侵入地において定期的に定着状況をモニタリングすることによって、侵略的な植物の意図しない侵入と拡散を予測でき、効果的なまん延予防対策の提示に貢献できると考えられる、と述べている。

情報源 京都大学 Latest research news
機関 京都大学 (国研) 農業・食品産業技術総合研究機構
分野 自然環境
キーワード 外来植物 | 雑草 | 穀物輸入 | 定着成功 | 国際貿易港 | 植物防疫 | 輸入穀物 | 雑草学 | 非計量多次元尺度法 | Non-metric multidimensional scaling
関連ニュース

関連する環境技術