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 ブルーギルの育メン?コロニー形成と子孫繁栄に存在感放つ!

発表日:2024.01.16


  オオクチバス・コクチバス(通称:ブラックバス)およびブルーギル(Lepomis macrochirus)の防除・掃討に向けて、全国各地でさまざまな取り組みが行われている。個体数低減化、さらには繁殖抑制に向けて、卵そのものや産卵前の成魚を排除する手法や、産卵床をパトロールする保護親魚(保護オス)を捕獲する手法などが試行されている。ブルーギルの繁殖力は誰しも認めるものであるが、繁殖生態の細部、とりわけ保護オスの役割は十分理解されていなかった。筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所のピーターソン マイルズ イサオ研究員らは、2022年夏に長野県上水内郡(かみみのちぐん)信濃町に在る「野尻湖」において、水中ビデオを用いて保護オスの行動を観察するとともに、その役割を定量的に検証した。その結果、ブルーギルの保護オスが互いに隣接して巣を作る様子や、そうした巣が65%(単独巣:35%)を占めることが確認された。これは、ブルーギルが群単位でコロニーを形成し、営巣・産卵する社会特性(コロニー繁殖セオリー)を有することを裏付けている。水中ビデオは保護オスの多様な防御行動もとらえている。保護オスは尻尾で水流を送る卵保護のみならず、巣の周囲を旋回し、捕食者を追い払っていた。保護オスを除去し、30分間観察したところ、捕食者の約93%は同種のブルーギルであり、ウグイやコイからの卵捕食は極めて少ないという結果が得られた。一方、積極的に行動する保護オスがいるコロニーでは、保護オスが除去されても、卵捕食を受ける割合が低く、捕食者が保護オス不在の産卵床に到達する時間が遅れるという新知見が得られた。コロニー繁殖セオリーと保護オスの影響力がブルーギルの定着成功に貢献しており、保護オスを除去すれば繁殖抑制できるという考えを修正する必要があると指摘している(DOI: 10.1002/nafm.10976)。

情報源 筑波大学 TSUKUBA JOURNAL
機関 筑波大学 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所
分野 自然環境
キーワード 特定外来生物 | 野尻湖 | ブルーギル | 侵略性 | 繁殖生態 | 定着成功 | コロニー繁殖 | 保護オス | 水中ビデオ | 卵捕食
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