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 三つ巴の戦い!イワナは劣勢・ブラウントラウト等が優勢…その先に何が?

発表日:2024.01.26


  サケ科魚類は古くから食用に供され、遊漁のターゲットとしても人気がある。日本では明治時代初期に在来サケ科魚類の養殖が始まり、北米やカナダ・ロシア原産のニジマスやカワマス、欧州・西アジア原産のブラウントラウト等が導入されてきた。外来サケ科魚類は意図的あるいは非意図的に国内に拡散し、在来イワナに悪影響を及ぼしている。国の生態系被害防止外来種リスト(旧称:要注意外来生物リスト)では、交雑に伴う遺伝子撹乱の可能性は低いものの、北海道・東北地方、長野県の寒冷地における放流禁止措置や、漁業権を踏まえた防除など、水域の実状に応じた対策を促している。筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所のピーターソン マイルズ イサオ研究員と津田准教授らは、長野県環境保全研究所、水産研究・教育機構水産技術研究所(日光庁舎)と共に、外来マス類(ブラウントラウト、カワマス)と在来イワナが混生する環境で起きている種間競合関係の解明に迫った。長野県上高地の「梓川(読み:あずさがわ、水源:北アルプス槍ヶ岳)」において、2021年6~9月に水中観察と各種の消化管内容物分析を行った結果、イワナの分布や生育環境に対する“負の影響”の実態が明らかになった。3種の1分当たり摂餌回数は同程度であるが、カワマスとイワナは川底を採餌(底つつき)し、主にトビゲラ・カワゲラを餌源としていることが分かった。他方、ブラウントラウトは河川の中層で摂餌する傾向が強く、陸生動物(カメムシとチョウ類など)を主体とする食生活を営んでいることが明らかになった。すなわち、3種の混生する水域では、少なくとも2種間で食性と生態学的地位(ニッチ)の重複が生じることが明らかになった。また、本研究では、ブラウントラウトがイワナを直接捕食するほか、より大型の陸生動物を捕食することで大幅にニッチシフトを起こす可能性が示唆された。同研究グループは同地のイワナの集団ゲノミクス研究も進めている。在来イワナの保全・管理に資する成果の結集、ひいては上高地一体を含む中部山岳国立公園の生物多様性の喪失軽減に向けた展開が期待される(DOI: 10.1111/1440-1703.12419)。

情報源 筑波大学 TSUKUBA JOURNAL
水産研究・教育機構 プレスリリース
機関 筑波大学 筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所 長野県環境保全研究所 水産研究・教育機構
分野 自然環境
キーワード 上高地 | カワマス | 梓川 | 定着成功 | 水中ビデオ | 底つつき | 中層採餌 | イワナ | ブラウントラウト | シェナーの重複指数
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