東北大学、芝浦工業大学および静岡大学は、「テラヘルツ波」を利用することで廃プラスチックの詳細な識別が可能となり、さまざまな時代の要請に対応できることを実証した。テラヘルツ波とは、光と電波の中間の周波数帯域の電磁波で、電波のような「透過性」とレーザー光線のような「直進性」を兼ね備えている。長年、扱いにくい周波数領域とされてきたが、近年では専用デバイスの実用化や車の自動運転への活用などが進んでいる。他方、プラスチックを巡っては、Reduce・Reuseに加え、Recycleの徹底、原料・素材の適切な切り替え(Renewable)や、循環経済(Circular Economy)を意識した取組が求められている。こうした情勢を踏まえ、東北大学等は、JST大学発新産業創出プログラム・プロジェクト支援型「プラスチック製容器包装廃棄物の高度選別装置の事業化」に取り組んできた。先行調査では、実際の廃プラ(1,416サンプル)組成分析に基づくビッグデータ化を行い、廃プラの種類には地域特性があることや、既存の識別技術の限界と課題を明らかにした。今回新たに、ファイバーレーザーを励起光源とするGaP結晶を用いる「独自光源(テラヘルツ分光モジュール)」を開発し、「機械学習」等を活用した解析手法を考案した。それらを融合した新規「廃プラ識別装置」を試作し、実証実験を行ったところ、黒色プラ、添加剤や難燃剤などが含まれている混合プラを識別することができ、紫外線や長期使用による劣化の度合いを把握できることが確認された。また、これから普及が加速すると思われるバイオプラスチックを見分ける手法としても有効であることが示唆された。「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(令和三年法律第六十号、令和4年4月1日施行)」に対応した技術として、高品質再生プラの生産と品質管理、ひいてはSDGsや循環経済に寄与する技術としての国内外に幅広く展開が期待できるという。テラヘルツ波は廃プラ識別以外にも応用可能で、投入エネルギーの小さい、高度かつ安全な「マテリアルリサイクル」の社会実装が期待できる、と述べている。