森林総合研究所と国内外の4大学からなる研究グループは、⾃然環境保全等を主⽬的としていないエリア(以下「マトリックス」)の生態学的重要性を理論的に裏付けた。生物多様性保全に関する国際目標の実現に向けて、保護区の設定に加え、「その他の効果的な地域をベースとする手段(OECMs)」を講ずる区域の活用などが検討されている。一般に、保護区の外は農地や人工林、都市などに土地が転換され、人間の生産活動に使用される場所となっており、「景観生態学」的にはマトリックスに該当する。同研究グループは、マトリックスの生物多様性保全効果を検証するために、生物の移動分散を考慮した空間明示型の個体群モデルを開発した。本研究のモデルは、ランドスケープのパターン化と「回路理論(circuit theory)」の応用を特長としている。マトリックスを格子状にセル分割し、各セルへ移動障壁の程度に応じた「抵抗(電気の流れやすさ)」を割り当て、死亡率に応じて回路から逃がす電気の量を調整することで、生物の出生・分散・死亡過程の解析を再現した。今回考案したモデルを用いてマトリックス内の環境改善が生物集団の「生存率」におよぼす影響をシミュレーションした結果、生物が移動する際に生存率を増加させる効果が、生物が保護区から移出しやすくする効果よりも高いことを明らかにすることができた。また、マトリックスの環境改善を図り、保護区どうしを連結することで、生物を保全する効果が一層向上し、保護区の面積と周辺環境の改善面積の間に相乗効果が発生することを示唆する結果も得られた。農林業を営む地域社会への成果還元などを想定しつつ、ランドスケープ・エコロジーに基づく空間モザイク管理の有用性・重要性を訴求している。
情報源 |
森林総合研究所 プレスリリース
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機関 | 森林総合研究所 フロリダ大学 ストックホルム大学(英語サイト) 高知大学 オーストラリア国立大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | ランドスケープ | 保護区 | 生存率 | OECMs | マトリックス | 景観生態学 | 回路理論 | ランドスケープ・エコロジー | モザイク | パターン |
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