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 極地研と気象研、20世紀中頃の「北極寒冷化」イベントの主要因を特定

発表日:2022.04.07


  国立極地研究所と気象庁気象研究所の研究グループは、20世紀中頃に観測された北極寒冷化イベントを精度良く再現し、人間活動に由来する大気中の微粒子(以下「人為起源エアロゾル」)の増大と、自然に生じるさまざまな現象が複合的に影響して起きたことを解明した。北極域の地上気温は、20世紀初頭(1910~1940年)に上昇し、20世紀中頃(1940~1970年)に低下した後、再び上昇し、現在に至っている。他方、数年~数十年の気候変動をもたらす要因としては、太陽活動や火山噴火活動、人為起源エアロゾルの他、「内部変動(例:エルニーニョ/ラニーニャ現象、大西洋数十年規模変動)」が挙げられている。同研究グループは、将来の北極温暖化を理解する上で、北極寒冷化イベントの詳細解明が重要であると考え、世界の最新の気候モデル群を用いた評価を行った。今回の気候モデル群は、気候モデルの国際比較プロジェクト「第6期結合モデル相互比較計画(CMIP6)」で提供された最新のモデルと、同プロジェクトの一環として実施されている「気候変動の検出と要因分析に関するモデル相互比較計画(DAMIP)」の気候モデルで構成されている。シミュレーションを実行した結果、従来のモデル群(CMIP5)と比較して北極気温変動の再現性が向上し、「北極平均気温(10年移動平均)の30年差」の観測値「マイナス0.81℃」に対する要因分析が可能となった。具体的には、GHGがプラス0.44℃ (±0.22℃)の温暖化に寄与し、人為起源エアロゾルがマイナス0.65℃ (±0.37℃)の寒冷化に、太陽活動と火山噴火活動による効果がマイナス0.14℃ (±0.11℃)の寒冷化に寄与したと見積もられた。また、数十年規模の気候の内部変動によって生じる平均的な寒冷化イベントの気温変化はマイナス0.47℃と見積もられた。すなわち北極寒冷化に対し、人為起源エアロゾルと内部変動が大きな影響をもたらしたことが明らかになった。さらに複数の統計分析手法(マルチモデル平均、インターモデルスプレッド)を駆使し、内部変動を考慮したところ、20世紀中頃に観測された寒冷化パターンを良く説明できることが示唆された。北極域での気候変動のメカニズム解明につながる成果であり、北極温暖化の将来予測の信頼性向上への貢献が期待できるという。

情報源 国立極地研究所 研究成果
機関 国立極地研究所 気象庁気象研究所
分野 地球環境
キーワード 人為起源エアロゾル | 北極寒冷化 | 内部変動 | エルニーニョ/ラニーニャ現象 | 大西洋数十年規模変動 | 第6期結合モデル相互比較計画 | CMIP6 | DAMIP | マルチモデル平均 | インターモデルスプレッド
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