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 ラボのプラごみが減る!?革新的な遺伝子導入プロトコル 慶大

発表日:2022.09.13


  慶應義塾大学は、“宙に浮いた液滴”内で遺伝子導入の主要操作を行う技術を設計し、その有用性を実証した。ライフサイエンス実験には多様な使い捨てプラ製品(例:ピペットチップ、チューブ、シャーレ・ディッシュ・プレート等)が使われている。欧米の大学・研究機関では、研究者一人が1年間に約60 kgのプラごみ等を排出しているという事例もあり、3Rの強化に向けた創意工夫や、使い捨てプラ製品からの脱却に向けた取組の必要性が提言されている。他方、超音波利用技術は目覚ましい発展を遂げており、物体の探知・計測のみならず、物体を浮揚させる仕組みの応用・実用化が進んでいる。例えば、目的に応じた液滴を空気中に浮揚させることで、容器を使わずに非接触で化学反応を行う実験手法(以下「浮揚法」)の確立が期待できる。同大学は、浮揚法のコンセプトが廃プラ削減につながることに着眼し、現在幅広く活用されている遺伝子導入法「トランスフェクション」への適用を試みた。浮揚法の適用を巡っては、液滴を細胞培養(インキュベート)に要するような長い時間浮かせた事例がなく、静止させることができたとしても液滴からの水分蒸発は避けられないという懸念があった。本研究では、細胞を懸濁させた液滴を超音波で浮揚させ、その体積をリアルタイム監視しつつ、蒸発した水分を補う手順を行うことで数時間のトランスフェクションを実現した。その結果、プラスミドDNAとトランスフェクション試薬(リポフェクタミン)の複合体の細胞への取り込みが円滑に進み、従来法と遜色のない遺伝子導入が実現した。また、一連の手順による遺伝子導入効果を評価したところ、導入遺伝子の発現効率と細胞取り込み量は3倍以上となることが確認された(静置した試験管使用時比)。このような高効率化をもたらした理由として、物質の取り込み経路の統合などが示唆された。この知見は、超音波浮揚が効果的な遺伝子導入条件として利用可能であることを意味している。廃プラ削減という社会的意義と、細胞工学分野に広く適用できるという学術的意義を兼ね備えた革新的な手法、と訴求している。

情報源 慶應義塾大学 プレスリリース
機関 慶應義塾大学
分野 ごみ・リサイクル
健康・化学物質
自然環境
環境総合
キーワード 3R | 使い捨てプラスチック | 遺伝子導入 | ライフサイエンス | 超音波浮揚 | 浮揚法 | トランスフェクション | 細胞培養 | プロトコル | 細胞工学
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