氷河期(氷期)と温暖な時期(間氷期)はどうして起こるのか?セルビアの地球物理学者ミランコビッチは1920〜1930年代に、地球が太陽の周りを回る軌道の形(楕円)や地軸の傾き・首振り運動の周期的な変化により、北半球の高緯度地域における「夏の日射量(以下『ペースメーカー』)」が少なくなると氷床が成長し、氷期が進行するという仮説を提唱した(ミランコビッチ仮説)。しかし、北半球と南半球の日射量変動は周期的に逆であるにもかかわらず、氷期—間氷期変動は全球的に同調して引き起こされてきた(マーサーのパラドックス)。———東京大学大気海洋研究所のスプローソン特任研究員と横山教授らの研究グループは、米国ラトガース大学の研究者と共同で、「マーサーのパラドックス」に焦点を当てた研究成果を発表した。“南半球の気候変化に敏感な“パタゴニア氷床のシグナルを捉えることができる、チリ沖海底堆積物コア(長さ:130 m)を採取・分析し、過去の海水にどれだけ陸由来の物質が含まれていたかを調査するとともに、ミランコビッチの計算値を含む諸情報を総合的に分析した結果、「過去約9万年間におけるパタゴニア氷床の変動がペースメーカーとほぼ同調」していたことが明らかになった。また、その間の地球の気候は「3つのモード」で変化しており、それらがペースメーカーのみならず、GHGの大気中の変化や、偏西風の位置とその南北緯度変化の影響を強く受けてきたことが示唆された。ミランコビッチ仮説だけでは完全に説明できなかった、氷期—間氷期変動の新たな要素の影響を支持する新知見であり、地球の大規模気候変動の謎を解く鍵になる、と述べている(DOI: 10.1038/s41561-024-01436-y)。
情報源 |
東京大学大気海洋研究所 プレスリリース
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機関 | 東京大学大気海洋研究所 ラトガース大学 |
分野 |
地球環境 |
キーワード | 温室効果ガス | 偏西風 | 氷期 | 間氷期 | ミランコビッチ仮説 | マーサーのパラドックス | パタゴニア氷床 | 海底堆積物コア | 地軸の傾き |
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