早稲田大学理工学術院の中垣教授と秋山教授の研究グループは、海水中のマグネシウムと大気中のCO2を最大限に活用した、画期的なカーボンリサイクルコンクリート「WMaCS®(Waseda Magnesium-based Carbon Sequestration materials)」を開発した。従来のコンクリート製造では、石灰石を加熱する過程で大量のCO2が排出されていたが、WMaCSは石灰を一切使用せず、海水とCO2だけで製造できることが特徴である。この技術により、コンクリート製造に伴う非エネルギー起源のCO2排出を大幅に削減できる可能性がある。―――研究グループは、古くから知られるソレルセメントの技術にヒントを得て、独自の配合技術を開発し、施工性と強度のバランスを保ちながら、圧縮強度25MPa以上を実現することに成功している。特に、施工後1〜2時間で凝結が始まるため、土木工事の現場での使用も十分可能だ。現在、同大学の西早稲田キャンパスにて、露天での耐候試験が進行している。試験開始から半年以上が経過しているが、目立った劣化は確認されておらず、WMaCSの耐久性が実証されつつある。また、実用化に向けたパイロット試験も開始されており、広島県・大崎上島の実証研究エリアで、海水を1日20トン使用したカーボンリサイクル技術の試験が進んでいる。2024年度中には、このエリアで供給されるCO2を活用し、WMaCSを用いたコンクリート製造が行われる予定だ。―――WMaCSは、消波ブロックやインターロッキングブロックといったプレキャストコンクリート製品への応用が期待されているが、塩化物を多く含むため、従来の鉄筋コンクリートとは異なり、普通鋼鉄筋の使用は難しい。そのため、研究グループはステンレス鋼鉄筋の腐食試験なども並行して進めており、水中での耐久性も詳細に検証しているとのことだ。