レゾナック、日本製鉄、日鉄エンジニアリングおよび富山大学の4者は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募した「CO2排出削減・有効利用実用化技術開発」事業に対し、「CO2由来メタノール経由青酸、グリシン製造の研究開発」プロジェクトを提案し、2025年5月1日に採択された。
グリシンは、最も単純な構造を持つアミノ酸であり、農薬、健康食品、食品添加物、電子材料など多岐にわたる用途を持つ基礎化学品である。特に、近年の健康志向の高まりや電子材料分野での需要拡大により、グリシンの市場規模は着実に成長している。一方で、現在のグリシン製造は主に化石燃料由来の原料に依存しており、製造過程でのCO2排出が課題とされてきた。こうした背景から、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、CO2を資源として再利用する「カーボンリサイクル」技術によるグリシン製造が注目を集めている。
本プロジェクトでは、製鉄所や火力発電所から排出されるCO2を原料にメタノールを合成し、そこからグリシンを一貫製造する技術の確立を目指す。研究期間は2025年度から2027年度までの3年間を予定しており、既存のCO2由来パラキシレン製造技術の成果を活用しつつ、低温下での高効率なメタノール合成触媒の開発、アンモ酸化反応による中間体生成、グリシン製造プロセスの最適化を進める。──レゾナックは、既に川崎事業所においてプロピレンからアクリロニトリルを製造するプラントを保有しており、同様の反応系を応用して、CO2由来メタノールを用いたグリシン製造技術の工業化を目指す。CO2由来メタノールは化石燃料由来とは異なる不純物を含む可能性があるが、同社の製法技術を基盤に、これらを制御可能な触媒プロセスを構築する。
研究開発は、CO2由来メタノール合成触媒の改良・量産化(日本製鉄、日鉄エンジニアリング、富山大学)、中間体およびグリシン製造プロセスの開発(レゾナック)など、各機関が役割を分担して進める。最終的には、LCA(ライフサイクルアセスメント)に基づく環境負荷の大幅削減を実現し、持続可能な化学品製造の社会実装を目指す。