環境省は、気候変動リスク(あるいはビジネスチャンス)と自然再興(ネイチャーポジティブ)に関する情報開示の運用に関する企業向けガイドを改訂した。ガイドの表題・副題は「サステナビリティ(気候・自然関連)情報開示を活用した経営戦略立案のススメ~TCFDシナリオ分析と自然関連のリスク・機会を経営に織り込むための分析実践ガイドVer2.0」。金融安定理事会(FSB)が設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の推奨事項を踏まえ、環境省は、気候変動リスクやESG投融資を促す施策を推進している。また、TCFDより遅れて登場した自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に関する情報開示の理解を図り、TCFD・TNFDの統合を促す施策も進めている。──企業が気候変動や自然環境に関するリスクと機会を評価し、それを経営戦略に組み込むための具体的な方法を示すため、2024年3月に本ガイドの初版が作成された。Ver2.0では、「カーボンニュートラルとネイチャーポジティブの統合的な推進はコベネフィットを生み出す可能性がある」という初版の基本的な考え方を踏襲しつつ、さらに高度なシナリオ分析と目標設定の策定プロセスが追加されている。また、令和6年度に実施した「気候関連財務情報開示を活かした自然関連財務情報開示モデル支援(ネイチャー開示実践事業)」の実績を反映することで、より具体的なイメージを提供している。──国内企業による具体的な取り組み事例として、アサヒグループホールディングスによる気候変動の財務影響を自然劣化と統合して詳細に分析し、バリューチェーン・サプライチェーン全体における情報開示、スコープ3を含むGHG排出量のトレンド分析や、農林中央金庫によるLCAの適用と被害算定型影響評価手法(LIME)を活用した気候変動と自然資本の関連性に係る評価事例、野村アセットマネジメントによる生物多様性フットプリントを活用した投融資先のリスク・機会の定量評価事例などを紹介している。