筑波大学の研究チームは、データ可視化に関する研究論文を体系的にレビューし、データ可視化が主に組織やコミュニティレベルの意思決定を支援していることを明らかにした。チャートや各種グラフ、ダッシュボードやGISなど、データ可視化はさまざまな分野で活用されている。しかし、これまでデータ可視化がどのような種類の意思決定に関与し、その支援範囲がどのように変化してきたのかについての包括的な分析は行われていなかった。──そこで、研究チームは2008年から2024年の16年間に発表された300以上の論文を調査し、その中から実証研究に焦点を当てた40の論文を抽出し、詳細に分析した。その結果、データ可視化は主に組織やコミュニティレベルの意思決定を支援していることが分かった。また、従来は「評価型」の意思決定支援が中心だったが、近年では、新しい解決策やアイデアを創出するプロセス(構築型)や、経験や直感に基づいて迅速に意思決定を行うプロセス(認知優位型)などをサポートする傾向が強まっていることが明らかになった。さらに、データ可視化が支援する意思決定問題の構造は、「ほぼ構造化された問題」から「半構造化された問題」へと拡大しており、特に半構造化された問題に対しては、ビジネスや公共政策の分野で専門家の高度な意思決定を支援していることが示された。本成果は、データ可視化の意思決定支援に関する現状を明確にし、今後の研究や実務において新たな可視化技術の開発や適用領域の拡大を促進するための知見を提供するものである。研究を主導した筑波大学の三末教授は「データ可視化の進化は、複雑な意思決定問題への対応力を高めるために不可欠である」と述べている。