東北大学大学院工学研究科の祖山教授らは、キャビテーションを利用してコーヒーかすから有用物質を抽出する新技術を開発した。「キャビテーション」とは、液体が高速で流れる際に、圧力が低下して気体(泡)に相変化する現象のこと。──世界では年間1,000万トン以上のコーヒー豆が生産され、その抽出後には大量のかすが発生する。しかし、コーヒーかすに含まれるカフェ酸などの有用物質を産業的に採算の取れる方法で抽出することは困難であり、多くが廃棄されていた。研究チームは、流れ場で発生させるキャビテーション(流動キャビテーション)を用いてこの問題を解決する方法を見出した。キャビテーションは、ポンプやバルブなどの機器装置に悪影響を及ぼす現象と見られているが、本研究はこの現象を逆手に取り、コーヒー粉末からカフェ酸を抽出し、同時にセルロース繊維をマイクロオーダーに解繊することに成功した。具体的には、ベンチュリ管式流動キャビテーション発生装置とバルブ式流動キャビテーション発生装置を用いて、コーヒー粉末を混合したエタノール水溶液に微細な気泡を発生・圧潰させることで、強い衝撃を与える処理を行っている。その結果、キャビテーションの圧潰エネルギーを最適化することが可能となり、処理に必要な消費電力を1/20に低減できることが示された。また、カフェ酸の抽出効率も向上し、マイクロオーダーのセルロース繊維への解繊も確認された。──この技術は、食品廃棄物から有用物質を抽出しつつ、繊維質を微細化して工業用材料などに利用できる可能性を示している。特に、バルブ式流動キャビテーション発生装置は高濃度で処理できるため、さまざまなバイオマスや食品廃棄物への応用が期待される。