東京科学大学の研究チームは、猛暑が妊婦の重大な合併症である常位胎盤早期剥離の発症リスクを高めることを、日本全国のデータを用いて初めて実証した。常位胎盤早期剥離は、胎盤が出産前に子宮から剥がれることで母子の生命に関わる危険を伴う疾患であり、日本では出産の約1%に発生し、妊産婦死亡や新生児の脳性まひの主因とされている。
本研究では、2011年から2020年にかけて全国11地域で登録された6,947件の症例と、同期間の暑さ指数(WBGT)データを用いて解析を実施。その結果、地域ごとの夏季WBGTが95パーセンタイルを超える「非常に暑い日」の翌日に、発症リスクが有意に上昇することが明らかとなった(リスク比1.23、95%信頼区間:1.11–1.39)。一方で、その翌々日にはリスクが有意に低下しており、猛暑が発症のタイミングを前倒しにする可能性が示唆された。
特に、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全を有する妊婦では、猛暑の影響がより顕著であった。研究チームは、猛暑日の翌日に出血や腹痛などの初期症状に注意を促す必要性を指摘している。また、熱中症警戒アラートと連動した妊婦向けの情報提供や、通院・外出のタイミングの見直しといった支援策の整備が重要であると述べている。
今後は、生活環境や行動パターンを含めた詳細な解析や、生理的メカニズムの解明が課題とされている。
情報源 |
Science Tokyo ニュース
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機関 | 東京科学大学(Science Tokyo) |
分野 |
健康・化学物質 |
キーワード | 暑さ指数 | 疫学調査 | 気候変動影響 | 母子保健 | 健康リスク評価 | 熱中症対策 | 妊産婦保健 | 周産期医療 | 公衆衛生政策 | 医療体制整備 |
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