産業技術総合研究所(産総研)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、人工衛星「だいち2号」(ALOS-2)によるSAR(合成開口レーダー)観測データを活用し、日本の国土に特化したSAR基盤モデルを構築した。SARはマイクロ波を用いたリモートセンシング技術であり、天候や昼夜に左右されずに地表の観測が可能である。特にLバンドを用いるPALSAR-2は、森林や地形変化の把握に適しており、日本のように森林が多い地域での活用が期待されている。
従来、SAR画像の解析には専門知識が必要であり、AIの導入が進められてきたが、大規模な学習には高い計算資源とデータ整備が求められていた。今回の研究では、産総研が保有する大規模AIクラウド「ABCI」を用い、教師無し学習手法「MixMAE」により、30万枚以上のSAR画像パッチを用いた事前学習を実施。学習データは、日本の土地利用・土地被覆の偏りを均等化するよう設計されており、森林・市街地・水域・耕作地帯をバランスよく含む構成となっている。
この基盤モデルを用いた転移学習により、土地利用・土地被覆の推定精度が従来手法に比べて10%以上向上した。SAR特有のノイズへの対応として、反射強度の極端な領域を無視する損失関数も導入されている。研究成果は、2025年6月開催の日本リモートセンシング学会第78回学術講演会にて発表される予定である。