上智大学大学院地球環境学研究科を中心とする研究グループは、サブサハラ・アフリカにおける廃棄物のエネルギー転換導入の課題を、カメルーンを事例に包括的に分析した研究成果を発表した。共同研究には香港城市大学、立命館アジア太平洋大学も参加している。
本研究では、システムダイナミクス(因果ループ図分析)を用いた構造的アプローチに加え、文献レビュー、現地調査、ステークホルダーインタビューを組み合わせることで、廃棄物のエネルギー転換を阻む要因を多角的に抽出した。具体的には、財政投資の不確実性、政策・制度の脆弱性、ステークホルダー間の協働不足、一般市民の認識の低さなどが主要な障壁として特定された。また、都市の清掃キャンペーンやごみ収集体制の改善といった短期的な対症療法的介入が、根本的な制度改革に結びついていないことも明らかとなった。――研究の背景には、世界的な廃棄物量の増加と、開発途上国における廃棄物管理能力の格差がある。特に不適切な処理は水質汚染や感染症の拡大を引き起こすほか、廃棄物セクターにおける温室効果ガス排出の主要因ともなっている。廃棄物のエネルギー転換技術(焼却、埋立ガス回収、嫌気性消化など)は、こうした課題への有効な対策とされるが、導入には制度的・財政的な支援が不可欠である。
研究者らは、カメルーンの事例を通じて、統合的かつ多層的な戦略と長期的な制度改革によるパラダイムシフトの必要性を強調している(掲載誌:Sustainable Production and Consumption)。