大阪大学大学院工学研究科を中心とする研究グループは、細胞を観察中に任意のタイミングでミリ秒単位の精度で凍結固定し、その瞬間の状態を詳細に観察できる新技術「時間決定型クライオ光学顕微鏡法(Time-deterministic cryo-optical microscopy)」を開発した。本技術は、光学顕微鏡による観察中に細胞を急速凍結し、固定直前までの細胞内現象の時空間情報を保持したまま、定量性と空間分解能の高い観察を可能にする。
従来の細胞動態観察では、露光時間を短くして時間分解能を高めると、光信号量が減少し、定量性や空間分解能が低下するという課題があった。また、化学固定では固定に数分を要し、瞬間的な細胞状態の保持が困難であった。これに対し、本研究では、液体イソペンタン−プロパン混合寒剤を用いた急速凍結チャンバーと、±10ミリ秒の精度で寒剤を滴下できる装置を開発。これにより、細胞内のカルシウムイオン(Ca²⁺)の伝搬やオルガネラの動きを観察しながら瞬時に凍結し、長時間露光による高精度な観察が可能となった。
さらに、凍結後の試料を用いた超解像顕微鏡やラマン顕微鏡による観察により、異なる時間スケールの観察技術でも同一時点の細胞状態を可視化できることを実証した。光刺激と寒剤滴下のタイミングを電気信号で制御することで、細胞応答の発生から凍結までの時間を±10ミリ秒の精度で決定することにも成功している。
本技術は、生命科学・医学分野におけるバイオイメージングの新たな基盤技術として、細胞の機能や薬剤応答の分子構造解明などへの応用が期待される。研究成果は、国際学術誌「Light: Science & Applications」に2025年8月23日付で掲載された。