東京海洋大学学術研究院海洋環境科学部門・荒川久幸教授らの研究グループは、東アジア海域におけるマイクロプラスチック(MP)の分布と挙動を広域かつ連続的に把握するため、東京湾からタイ湾までの航路において調査を実施した。――本調査では、同大学の練習船「海鷹丸」による実航行を活用し、航行中に船底から取り込んだ海水を用いて微細なMPの連続採取を可能にする装置開発・運用なども行っている。
本手法により、東京湾からタイ湾までの航路において、微細なマイクロプラスチック(MP)の濃度分布と性質を亜表層(水深5 m)で連続的に測定することができた。従来のネット曳航による調査では、海面の比較的大きなMP(LMP; >350 µm)の離散的な分布しか把握できなかったが、船舶が航行中に船底から取り込む海水をろ過する装置を用い、30 µm以上の微細なMP(SMP)の連続的な採取と分析を可能にした。東京からバンコクまでの航路において、MPの濃度、粒径、劣化度(カルボニルインデックス:CI)、ポリマータイプなどを評価した結果、微細なMPの濃度は南シナ海で最も高く、日本の太平洋岸では低下していることが判明した。粒子サイズが小さいほど濃度が高く、約80%が60 µm以下であった。ポリマータイプは約80%がポリエチレン(PE)であり、CIの値は南シナ海および東シナ海で低く、日本沿岸では高かった。これらの新知見は、MPが南シナ海・東シナ海から流入し、東方向に拡散する過程で劣化が進行していることを示している。また、生態学的リスク評価においても、MP濃度の高い南シナ海でリスクが高いとされた。
本研究は、東アジア海域におけるMPの起源、分布、挙動の科学的解明に資する成果であり、今後は大阪ブルー・オーシャン・ビジョン(2050年までに海域への新規プラスチック流入ゼロを目指す)実現に向けた基礎情報として活用される予定である。研究成果は、国際科学誌「Science of the Total Environment」オンライン版に掲載された。なお、この研究はJICAおよびJSTによるSATREPSプログラムの支援を受けて実施されたものである。
情報源 |
東京海洋大学 プレスリリース
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機関 | 東京海洋大学 |
分野 |
ごみ・リサイクル |
キーワード | 海洋汚染 | 海洋環境 | SATREPS | ポリエチレン | マイクロプラスチック | 東シナ海 | 海洋調査船 | カルボニルインデックス | 南シナ海 | ブルー・オーシャン・ビジョン |
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