東北大学大学院理学研究科と神戸大学大学院工学研究科の研究グループは、ペロブスカイト型コバルト酸化物(La₀.₆Sr₀.₄CoO₃)を用いた水の電気分解において、電極触媒表面の原子構造が電気化学環境下で自発的に変化する様子を放射光X線回折とベイズ推定により観察した(掲載誌:ACS Applied Materials & Interfaces)。
この構造変化は、高効率なコバルト–鉄酸化物触媒と類似しており、触媒活性の向上に寄与する可能性が示された。
「電極触媒」とは、電気分解反応を促進する電極表面の材料であり、反応電位を低減する役割を持つ。「ベイズ推定」は、確率論に基づき観測データの信頼性を定量的に評価する情報科学的手法である。今回の研究では、電位制御下での酸化物表面構造の時間変化を精密に捉え、成膜直後とは異なる辺共有構造が形成されることを確認した。
水の電気分解は、再生可能エネルギーを水素として貯蔵する「グリーン水素」技術の中核であり、CO₂排出削減に資する。従来、貴金属を用いない酸化物触媒の構造変化は直接観測が困難であったが、本研究により、電極表面での物質移動や電子軌道の変化、立体障害の影響などが触媒活性に与える影響を原子スケールで理解する道が開かれた。
研究グループは、今後の触媒開発において、意図せず生じる構造変化を制御可能な設計指針として活用できると考えている。これにより、高性能材料の開発が経験則に依存せず、構造情報に基づく合理的な設計へと進展することが期待される。
情報源 |
東北大学 プレスリリース・研究成果
神戸大学 プレスリリース |
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機関 | 東北大学 神戸大学 |
分野 |
環境総合 |
キーワード | 水の電気分解|酸化物触媒|ペロブスカイト構造|放射光X線回折|ベイズ推定|電気化学環境|原子配置|触媒活性|グリーン水素|立体障害 |
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