出光興産は、豪州子会社を通じて権益を保有するボガブライ石炭鉱山(ニューサウスウェールズ州)において、2025年9月に太陽光発電設備の運転を開始した。2026年下期には豪州最大容量となる「バナジウムフロー蓄電池(バナジウムレドックスフロー電池とも言う、以下「VFB」)」を導入する。
同社は、今回の取り組みを通じて、鉱業界における再生可能エネルギーの利用促進と脱炭素化のモデル構築を目指す。VFBは、電解液の量で蓄電容量を調整できる液循環型蓄電池であり、長寿命・高安全性・スケーラビリティに優れる。リチウムイオン電池(LiB)と異なり、発火リスクが低く、充放電サイクル劣化が少ない点が主な特長である。正負極に同一元素を用いることで安定性が高く、再エネ主力電源化に伴う系統安定化技術として新規性が認められている。
豪州では鉱山開発に伴う環境対策が強化されており、GHG排出量削減に関する法規制も進展している。出光興産は、敷地内に設置した太陽光パネル(出力5 MW)による自家発電により、初年度で約5,000トンのCO₂排出削減を見込む。加えて、蓄電容量12.6 MWh・出力2 MWのVFBを導入し、昼間の発電電力を蓄え夜間に活用することで、化石燃料発電への依存を低減する。
なお、導入予定のVFBは、住友電気工業から調達し、電解液は出光オーストラリア関係会社が51%を出資するVecco社が製造・供給する。太陽光発電とVFBの組み合わせにより、出光興産は鉱山への電力供給の最適化と持続可能な運営を進めるとともに、クリティカルミネラル事業への本格進出を加速し、国際的な脱炭素化の潮流を先導する方針を掲げている。