アメリカ国立科学財団(NSF)の助成を受けた科学者らは、2002年に発生した大規模な氷河融解によって南極のマクマード・ドライ・バレーの生態系に10年におよぶ変化が生じたとする研究成果を発表した。マクマード・ドライ・バレーは南極最大の無雪地帯であり、低湿で降水量が少ないことから極地砂漠環境と考えられている。NSFは過去25年にわたり長期生態学調査(LTER)プロジェクトによって同地の大気および生態学的データを収集している。それによると、1987~2000年に太陽放射が漸増した一方で夏季平均気温が徐々に低下し、それに応じた河川流量の減少や湖氷厚の増大などの影響があったとみられる。2002年の夏季に、異常な高温と日射で氷河融解が1969年以降最大となり、その影響として、湖沼、河川、土壌における様々な変化がその後10年間にわたって生じたという。なかには、それまで減少していた土壌生物種が徐々に増加するなど、時間のかかる変化もあった。科学者らは、突発的な気候イベントが極域で生態系の長期的な変化を引き起こす可能性があるとしている。