国連環境計画(UNEP)は、フロンティア報告書(2018/19)で、科学技術や産業の発展に伴って新たに出現又は顕在化した重大な環境問題として、合成生物学の台頭、生態系の連続性の崩壊、泥炭質永久凍土の融解、窒素汚染、気候変動対策の意図しない失敗(不適応)の5つの課題をあげ、解明と啓発の必要性を強調した。1)合成生物学は、人間にとっての利益という点で可能性と課題があり、特に改変生物の環境への放出リスクについて広範な議論が必要である。2)開発に伴う生息地の分断や孤立化により生態系の連続性が断たれ、種の永続性が危機に瀕している。3)急速な温暖化は泥炭質永久凍土を融解し大量の温室効果ガスを放出させるが、泥炭質永久凍土の正確な位置、融解の実態や影響は解明されていない。4)窒素肥料をはじめ窒素化合物の消費増加により環境の窒素汚染が進行しているが、問題は十分認識されていない。5)気候変動対策が意図せず資源を損ない、問題を複雑化し、解決を先送りしている例があるとして責任ある適応策の実施のための指針を示した。